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大切なものについての考察

エディターズブログ 2017.06.02 (金) 2:06 PM

 子どもが少しずつ大きくなり、アパートの部屋が手狭になってきたことと、やむにやまれぬとある理由もあって、自分の部屋の書棚から溢れ返った書物を、少しずつ整理していました。

 それでも不思議と本は減らず、書棚の傍にあるカラーボックスの上にも積み重ねられた状態が続いていますが、そうした光景を日々眺めながら、ふと、自分にとって本当に「大切なもの」ってなんなんだろう、という思いが湧き上がって来ました。

 

 「もの」には、その所有者だけの記憶が染みついています。その「もの」があるからこそ呼び覚まされるエピソードがあって、その「もの」を無くすことで記憶もまた失われてしまう…。

 本もまたそうした「もの」のひとつで、ある本を読んだときに自分が感じた思い、読んでいたときの状況や状態も、本そのものが手元にあることで甦って来る気がします。

 だから、本を手放すということは、その本にまつわる記憶も消去することに等しいのではないか――。

 

 20代の頃、自分が読んだ本のリストをつくっておいて、仮に何らかの理由で手放してしまうことがあっても、その本が自分の手に収まった過去があることを、すぐに思い出せるようにしていました。

 ただ、そうした作業も、単なる怠惰な性格のためなのか、ある種のこだわりを失ってしまったことによるものなのか、そう長続きはしませんでした。

 

 これから先の人生で、たぶん、手にしたすべての本を憶えておくことはできなくて、そうした本全部を手元にとどめておくことも難しくて、でも、何があっても自分の眼に見える場所、手の届く範囲に置いておきたい「もの」というのは、確かにあります。

 選別せざるを得ない状況になったとき、そうやって残っていったものが、本当に「大切なもの」になっていくのかもしれません。

 

 そして、そうした読書の記憶や体験を、次の世代に向けた本の編集に費やすのが、自分の役割なのだろうと、それがまた本当に大切なことなのだろうと、今は感じています。

(編集部A)